高松高等裁判所 昭和31年(う)447号 判決
論旨は刑法第百九十七条の三第二項の所謂職務上不正の行為とは職務行為自体又はそれに密接な関係ある行為を指称するもので本件の如く被告人等が共謀、或は単独で国庫負担県災害復旧工事等の措名入札に当り所謂贈賄者の請託を受けその工事の最低予定価格を上司の机の中から盗見し或は入札の敷札をすり替え、設計金額を盗見してそれを所謂贈賄者側に洩したりする行為は窃盗に類する不正行為であるが前記法条の職務行為と称することは出来ない、従つてかかる行為に対する謝礼として金銭を授受するもそれは賄賂でないから、被告人等の本件行為に刑法第百九十七条の三の第二項を適用したのは法令の適用に誤りがあるというのである。しかしながら被告人等は原審判示のように入札契約関係の事務を担任する者であるからこれが職務執行に当つては各入札者に私せず厳に秘密(その秘密を覚知するに至つた機会、方法等は問わない)を守り自由任意の入札を為さしむるの職責を有するものである、従つてこれにもとり、贈賄者の請託を受けて原判示のように工事の最低予定価額を上司の机の中から窃見し、或は入札の敷札をすり替え設計金額を窃見してこれを贈賄者に洩すなどの行為は結局その職務違背にして刑法第百九十七条の三第二項の所謂職務上の不正行為を為したるものに該当すること明白であるから原審が判示行為を同項に間擬したのは当然で何等法令の適用に誤りはない。従つて本論旨も理由がない。
(裁判長判事 谷弓雄 判事 小川豪 判事 松永恒雄)